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最高裁判所第一小法廷 昭和56年(オ)1190号 判決 1982年2月04日

上告人

鶴町輝衛

上告人

鶴町和道

右両名訴訟代理人

貝塚次郎

被上告人

椎名まき

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人貝塚次郎の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件借地契約における借地期間を昭和三六年一月八日から昭和五六年一月七日までとする旨の約定は、その形式、文言にかかわらず借地権の存続期間を二〇年と定める趣旨のものと認めるのが相当であるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(中村治朗 団藤重光 藤﨑萬里 本山亨 谷口正孝)

上告代理人貝塚次郎の上告理由

一、本件の争点は昭和三六年一月八日に期限を昭和五六年一月七日までと定めて契約された借地契約の期間は、二〇ケ年の期間を定めたものとされるか、二〇ケ年に満たない期間を定めたものと認めるべきものか、にあつて、それは事実認定の問題である如くであるが、当事者の表示意思は、契約書に二〇ケ年を満たない期間を表示したものであるのに、右の外形上の表示と異なる当事者の意思解釈をすることが許されるか(原審はそのように解釈した)に関連する故に法律問題であるように考える。

二、原審はこの点について、要するに「契約当事者が特に二〇ケ年に一日足りない期間を定めたと認むべき特段の事情は存在しないから、本来、契約当事者は二〇ケ年の期間を定める意思であつたのに民法の初日不算入規定を知らなかつたか、或は計算を誤つて、契約書には右のように表示したものと認めるのが合理的であるから、契約書の文言に拘らず、当事者の意思において借地期間は二〇ケ年の期間を定めたものと解釈するのが相当である」とするのである。

三、確かに原審のしたように当事者の意思解釈をする余地がないわけではない。

けれども、本件の具体的事案において、賃貸人亡鶴町光衛の意思がどうであつたかは、原審のいうに、しかく明確ではない。契約当事者である鶴町光衛が、そのような意思であつたことが、立証されゝば、問題はないが、同人は、既に昭和四三年に死亡していて、既に真意確認の方法がないのである。原審は「二〇ケ年に一日足りない期間を定めたとする特段の事情はない」というけれども、亡鶴町光衛にその意思がなかつたと速断することは出来ないのである。

四、そうすると、当事者の真意が確認し得ない以上、当事者のいづれに利益を生ずるかを問わず、契約の内容は外形に表明された表示意思に従つて決するのが相当であると思う。

上告人は右の点について最高裁判所の判断を求めるものである。

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